医学部受験では、多浪が当たり前になってきています。
私(リテイク名古屋代表)が、中高一貫校で勤務していた頃(20年以上前)と比べると、多浪の多さは尋常ではないほどです。女の子でも4、5浪をしている子がたくさんいる。。。それに驚いたものです。
正直こんなに多浪が増えるとは、思っていませんでした。私の感触では、2000年前後から急速に受験者が増えてきたように感じます。多浪が特に増えたなあ、と感じるようになったのは、リーマンショックのあった2007年以後ですが、あっけらかんと「私は5浪や6浪です」という受験生を見て驚いたものです(10浪の方がある予備校にいたそうです。授業を抜け出し、ビルの上でタバコをぷかぷかしていたとか)。これほど受験生が増えた理由は、不況に対する不安が急速に高まったからで、一般家庭の方も私立医学部受験をするようになったからです。国公立医学部の難易度が高いのは昔からですが、多くの私立医学部は、昔は一部を除いて驚くほどレベルが低かったのです。やはり授業料が半端なく高かったためで、ほとんど無選抜のような状態でした。私の知り合いの某私立医学部卒の方は(もう40年以上前ですが)、入試の前日に酒盛りをして、試験当日は名前を書いて、あとちょこちょこ問題を解いて、試験会場で寝てしまいましたが、それでも合格していたそうです(笑)。
筆者の地元は、名古屋市ですが、愛知医科では、初年度に裏口入学問題が起こり、それ以来、内部の監視委員会を作り、受験で不正が起こらないシステムを作り、今では日本有数のフェアな受験を行う大学になってしまいました(笑)。愛知医科や藤田保健衛生大学は、昔は(もちろん40年近く以前ですが)、現在の朝日大学歯学部程度の偏差値で、それらの大学の出身というと患者がドン引きしてしまうから、内緒にしていた時代がありました(本当です)。しかしそれも遠い昔になり、その偏差値は今やほぼ70程度になり、子供が同じ愛知医科、藤田を受験すると、名前は同じでも、中身やレベルは完全に別物になってしまいました。例えて言うと、昔は今の朝日大学の歯学部レベル(偏差値40程度)→早慶の看板学部(偏差値70程度)になってしまったのです。今の愛知医科や藤田は本当に優秀な大学になってしまい、藤田などは世界の優秀大学ランキングで、私立部門で医学部1位を獲得するまでに至りました(これは凄い!)愛知医科や藤田は地元名古屋で言うと、名古屋大学の普通学部よりも、確実に上のレベルになってしまいました。賢い一般家庭の親なら、普通学部に行かせて、会社に就職させるより、年間3000万を切る程度の学費ならば、愚かしい住宅ローンなどをするより、資産価値があることに気づいてしまったのです。実際住宅ローンでも3000万など、レベルとしては大したものでないことを考えると、3000万切る学費で、医学部に入れてしまうメリットは、3000万の住宅ローンをするよりも、確実なリターンがあるという意味で、計り知れないほど一般家庭にとって大きいのです。実際学費を学資ローンしても、働いて7年くらいで返せてしまいます(確実にペイしますね)。今後景気が上向くことが難しい以上、やはりこれからの時代は、退職のない、社会的に尊敬され、収入の高い職業である医師になることは、一生食いっぱぐれのないレールに乗ったようなものです。
問題は、今受験をしている子息のいる開業医の方々です。両親はOBであるのにも関わらず、子供は、なかなか自分の母校に合格できません。大学は、国家試験の合格率を上げることと、受験生の数を増やしてばかりで、後継者がいなかったら、開業医という仕事は成立しない開業医にしたら、「ふざけるな!」という心境でしょう。
今は開業医の受難の時代と言えると思います。これほど医学部受験が難しくなったのは、もちろん不況の影響だけではありません。学費が大きく下がっていることがあります。全国的にも平均3000万程度になってきました(3000万を切るところも増えています)。そのため、上で述べたように、一般家庭の方でも入学できるようになってしまったのです。今後も学費低下の動きは全国的に止まらないでしょう。本来は学費も1億ぐらいにすれば、一般家庭は絶対に参入することはできず、開業医にとって、めでたし、めでたしなのですが、医学部は国家試験を上げなければならないため、全国的に学費を引き下げる動きは止まりそうになりません。学費を引き下げれば、より優秀な生徒を大学は獲得でき、国家試験の合格率は上がるのです。
結局、多くの開業医の子息は、時代の狭間にあって、這い上がれず、もがいています。開業医という家庭に生まれた以上、医学部に入らなければならないわけですが、当然彼らの子供も医学部に入学しなければならないわけです。自分の意志とは関係なく。何か壮大なツケ回しゲームに思えるのは、私だけでしょうか。